Fishbone

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2022.8.2

リズムを刻め

バンドの真ん中に立って、大きな声で元気よく唄うのがボクの役割なのだが、リズム楽器が出来るようになれたらなと思う。
ドラムやパーカッションに憧れがあるのだ。
しかし、同じバンドの仲間であっても、リズム隊ってのは別の人種であると感じる。

ずいぶん前にこんな事があった。
バンドメンバーの若きドラマーくんが、店にひょっこりと現れた。
手に大きな荷物を持っているので、それは何かと訪ねるに、
「ジャンベです」
「パーカッションかね?」
「そうです、スタジオで叩いてました」
「へー、誰と?」
「え?一人ですけど」
「え、一人でずっと叩いてたの?」
「はい、スタジオを3時間取っていたんですけど、やっとスイートスポットが分かってきて、イイ音が出だしたところで時間切れになりました」

人は一人で3時間も太鼓を叩ける生き物なのかと、大変に驚いた。
ボクなら3時間もスタジオに一人なら、ちょっと歌を唄って、ギターを弾いて、ピアノの前に座って、ドラムの前に座って、それでもまだ2時間も残っている、ちょっとビールでも呑むかと時間を持て余すに違いない。
同じチームにいながら、こいつとは別の進化の道をたどってきたのだと強く感じた。

そして、そう云う別の生き物の道具だからこそ、リズム楽器には憧れがあり、何年かに一度その波がやってきて、実際に手を出す。
前回は、パンデイロだった。
ブラジリアン・タンバリンとも云われ、皆が手にした事があるモノよりも一回りほど大きな作りになっている。
タンバリンなのに、様々なテクニックを駆使して叩くと、ドラムの様な音になるのだ。
これが欲しい欲しいと店で騒いでいると、スタッフと有志のお客さんが誕生日に贈ってくれた。
やで嬉しやと、さっそく稽古を始めたのだが、思っていたよりもずいぶんと重い。
左手で枠の部分を持ちカクカクと動かすのが基本の動作なのだが、ボクの筋力ではこれが長く続けられない。
パンデイロの前に筋トレだなぁと笑っているウチに触らなくなってしまい、もうずっと長い間ケースにしまいっぱなしだ。

そして今回の事の起こりはYouTubeであった。
アフリカのどこかの国の土産物屋と思われる場所で、黒人が丸い木の実を二つ紐で繋いだモノを手にしている。
木の実の中には何か入っているらしく、振るとシャカシャカと音がする。
「2回シェイクして、当てる、当てる」
そう言いながら、片方の木の実を手に握り、紐で繋がったもう片方を上下に振って木の実同士をぶつける。
すると、それがリズムを刻みだし、さらにはそのビートに乗って唄い出したではないか。
「いやだ、格好イイ。これ欲しい」
調べるに、アサラトと云う西アフリカの打楽器らしい。
木の実の代わりにプラスチックを使った日本製のモノもあり、それはパチカと名称が変わる。

しかして、ネットで注文したパチカが、家に届いた。
さっそくシャカシャカ、カチカチしていると、それを見た娘が言う。
「あ、それ知ってるで。イタリアン・クラッカーやろ」
「おしい!っていうか、なんか旨そうだなソレ。それも言うならアメリカン・クラッカーだ。っていうか、それも違う」

そして少し触ると分かるのだが、アサラト・パチカを動画の様に鳴らすには、他の楽器と同じく猛練習が必要だ。
この至極当たり前の事に、何故、購入前に気付けないのか。
パンデイロと同じ轍を踏まないのが、この夏の目標である。