- 2022.5.20
三角関数とフランケンシュタイン
高校一年の数学の授業であったと記憶する。
黒板には三角形が書かれて、その回りに見慣れない文字と記号が見える。
サイン、コサイン、タンジェント。
当時、大人の言うことには、とりあえず全て逆らうギザギザハートの子守唄だった僕は、挙手し、
「その、なんちゃら関数ってヤツは、なんに使いますのん」
と、授業の進行を止めた。
「電信柱を立てたりする時に、使いますね」
数学教師は、生真面目に答える。
「たぶん電信柱は立てへんと思うんで、オレ、もうそれよろしいわ」
と、この瞬間に僕の人生での数学は終了した。
それからその学校も卒業し、何年もたった日のこと。
数本のジャンクギターが手に入ったので、それをバラバラにして使えるパーツを取り、新しい一本のギターを拵えてみようと云うことになった。
いわゆるフランケンシュタイン・ギターである。
ボディにネックを継ぐ時に、ナットとサドルからのちょうど同じ位置に12フレットを設定せねばならない…
そして、12フレットを押さえた時に、ナットとサドルと弦高が作る三角形が対称でなければならない…
な、なんて、ややこしいんだ弦楽器。
しかし、待て、これ昔になんかやった様な気がするぞ。
こ、これは、三角関数じゃないか。
「と、いうワケで、おとうが作ったギターは、チューニングのキチンと合わない、変な音のギターになってしまいましたとさ」
だから息子よ、一見意味のない様に思える勉強も、将来に何の役に立つか分からないから、やっておくに越したことはないよ。
「えー、けどオレ、たぶんギターは作らへんと思うわー」
なるほど、時代は繰り返すのだ。