Fishbone

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2024.5.22

野球たいへん記

野球について語るとき、ついつい恨み節になってしまうのをご容赦いただきたい。

ボクには六つ年かさの兄がいて、彼は大変な優等生で、その上にスポーツマンであった。

兄貴は、少年野球から中学の野球部、そして高校の硬式野球部へと進んだ。

ファーストで四番打者の優秀な選手であったらしい。

 

さて、ボクも六年遅れで兄と同じ小中高校へと通うのだが、ここにボクの不幸があった。

行く先々で、何故か兄を受け持った教師と出会い、彼らはボクの顔と名札を見たあと、一様に同じことを言うのだ。

「ん?お前ミヤザキの弟か、野球やれへんのか?」

高校一年の時にいたっては、授業をサボって校外へ脱出しようと塀を跨いだところを捕らえられたが、その教師は叱るでもなく、不思議そうにボクの顔を見上げて。

「お前、ミヤザキの弟か?なんで野球部入ってないねん」

その教師は、兄を指導していた野球部の名物監督であった。

 

ボクは決して野球が嫌いなわけではない。

ペナントレースを追いかけていた時期もあったし、実況パワフルプロ野球だって負けなしだ。

しかし、こう度々に同じことを言われ続けては、生来のひねくれた性格も大いに影響して。

「ケッ、誰が野球なんてやるものかっ」

バットの代わりにギターを握る人間に仕上がった。

 

ボクの息子は、この春から中学へ進学し、野球部に入部した。

このことが、兄は大変に嬉しかったらしく。

「じゃあ、オジサンが入学入部祝いにグローブをプレゼントしてあげよう」

ということになり、三人で連れ立ってスポーツ用品店に行き二万円弱のグローブを買ってもらった。

その際に「他にもいるものがあるから、ついでに買ってきて」と、配偶者から渡されたリストのままに買いそろえるに、グローブの倍ほどの金額を支払うはめになり。

「野球ってのは金のかかるスポーツなのだなぁ」

静かに唸るのだった。

 

先日、初めての練習試合があるのだと、息子はそわそわとしていた。

彼は左投げを重宝されてか、投手としての指導を受けている。

「さすがに一年で、いきなりは投げさせてもらえないのだろう?」

「いや、練習試合やから、ちょっとは出してもらえるらしいで。うーん、緊張するなぁ」

「へぇ、そりゃすごい。ところでどこと対戦するの?」

「○×中学、先輩があんまり強くないチームって言うてたで」

「○×中学!それは、キミの中学と違って、めちゃくちゃヤンチャな地域の学校やで、『へーい、チビのピッチャー出てきたで、キャッチャーまで届くかー?』とか野次られんのと違うか」

「うーん、ただでさえ緊張してんのにやめてえや!」

 

残念ながら観戦にはいけなかったので、帰ってきた息子に結果を聞くと。

「三振いっこ取ったで」

「おお!」

「ピッチャーゴロも処理した」

「おお!どれぐらい投げたの?」

「2イニング」

「フォアボール出した?」

「いっぱい出した、っていうか、10点ぐらい取られちゃった」

そう照れて笑っていたが、少しも悔やんではいなさそうだった。

小学生の時に所属していたソフトボールチームの監督と相性がよくなくて、少しつらい経験をしてきたが、彼の笑顔を見るに、今度は良いチームに出会えたようだ。

 

次の試合は、応援に行きたいと思っているのだが。

「ミヤザキくんのお父さんですか、野球はやっていたんですか?」

そう聞かれたらどうしよう。